愛憎

5/8
前へ
/110ページ
次へ
「ほぉ~う。日向はまた俺の授業を聞いていないなぁ?」 40歳の独身の男老人の先生は、蓮の頭を教科書で軽く叩いた。 そして、隣の席の私を見て、内心驚いた顔をした。 「……珍しい。相沢が授業中に喋るなんてな」 そう言った後、蓮の方を向いて、蓮を睨んだ。 「まさかお前………」 私の肩が跳ねる。 胸の鼓動が速まる。 一体、何を言われるだろうか。 「…相沢と仲良くなったのか!!」 先生は顔を明るくして、言った。 ……はぁ?…… 何か少しがっかりしたような、 ホッとしたような…。 私はひとまず胸を撫でおろした。 「前は、仲悪かったよな。二人が言い争っているの、見たことあるぞ」 先生はうんうん、と自分で頷きながら、延々と語り続けていた。 実際、どうでもいい……。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加