欲望

2/17
前へ
/110ページ
次へ
「失礼します」 私達二人は並んで…いや、私が先に職員室に入った。 ドアを通り、ドアの直ぐ傍に立つ。 見渡すと、職員室には数名の教師が疎らにいた。 その一部の教師が振り返る。 「相沢美嘉と日向蓮です」 広い職員室に、私の高い声が響く。 「呼んだのは、どなたですか?」 私がそう言うと、 「校長室へ来なさい」 低い声に驚き、振り返ると、 私達二人の背後に、図体のでかい中年の男性が立っていた。 …校長だった。 「…はい」 私達は同時に頷いて、蓮と共に、職員室の隣の校長室に入った。 ……蓮とはまだ、気まずいままだ。 職員室へ向かう途中も、一度も会話しなかった。 というより、どちらも口を開けなかったのだ。 『触らないでよ』 蓮は美嘉のその言葉に傷つき、 対する美嘉は、蓮にそんな態度をとってしまったことを悔やんでいた。 だからといって、簡単に謝れるものでもない。 二人共、素直ではないのだから。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加