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「ない…ない…どうしてないの……」
その頃、私は、
無くなったネックレスを探していた。
授業を抜け出し、校舎裏で地面を這いながら、辺りを見渡した。
「…さっきまであった筈なのに…」
手の甲で額の汗を拭う。
真冬だというのに、流れる汗が止まらない。
きっとそれは、暑さだけではないと思うが…。
私は顔を青ざめさせ、“最悪のケース”を考えないようにしながら、ずっとそこで探し続けた。
木の根元、花壇付近、歩いた場所……気が遠くなるくらい、何度も何度も探した。
手や膝が土で汚れている。
授業にも出ていない。
そんなこと、構わなかった。
ただ、ネックレスが出てくることを信じて、一心に探し続けた。
だが、ネックレスが出てくることはなかった。
大切な大切なネックレス。
それは、
この世で一番好きな人がくれた物だった。
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