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「千紗は全部知ってたよ。
俺が美嘉を想っていることを。
付き合う前から」
蓮は笑みを崩さず、私の髪をぐしゃぐしゃに掻き乱した。
「嘘!千紗はそんな素振り、一つも見せなかった」
私は乱れた髪をそのままに、地に座り込んだまま、俯いた。
その頭に、蓮が語りかける。
「千紗は、優しかった。
誰も、恨まなかった。
自分だけを犠牲にして、美嘉を傷つけなかった」
私は更に俯く。
そう。千紗は優しかった。
私なんかより、ずっとずっと強かった。
千紗は私を責めないでくれていた。
なのに、私は千紗を…―――
頭にフラッシュバックしたのは、千紗の可愛らしい優しげな笑顔。
千紗に初めて出逢った“あの日”。
4月。
女子トイレで私は苛められていた。
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