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不意に千紗が私を振り返った。
「美嘉。急がないと、次の授業に遅れちゃうよ」
千紗が手招きする。
「…そうだね」
私は笑みを浮かべた。
実をいうと、私はこの高校に入学した時から、悠太先輩のことが好きだった。
入学式の入り口で、胸に付けるコサージュを配っていた悠太先輩の笑顔に、私は釘付けになった。
コサージュを貰う瞬間、
「入学おめでとう」
そう言って微笑んだ、悠太先輩の顔が、とっても優しくて…
私の、初恋だった。
今までは、男の方が私に夢中だったから、こんな気持ち、どうしたらいいのか分からない。
部活決めの時も、悠太先輩がサッカー部所属と知って、マネージャーになった。
それがきっかけで、マネージャーに立候補していた千紗と知り合った。
二人でマネージャーをやっているけれど…、
今思えば、後悔してる。
それはあの時…
『千紗って美嘉と仲良いよな』
私が悠太先輩と付き合い始めてしばらくして、悠太先輩は千紗に話し掛けた。
―…自分の彼女の友達だから、という理由からだった。
でも、それが原因で、悠太先輩は千紗と仲良くなってしまったのだった。
そして私は…先輩に別れを切り出された。
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