欲望

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悔し涙が溢れる私に、蓮が微笑みかけた。 「あの千紗が怒ってると思うか? むしろ、ずっと憧れてきた人に殺されて、笑ってるかもな。 美嘉が殺してくれて、嬉しい―――って。 冗談だけどな…」 そう言って、困ったように笑う。 私は顔を上げることが出来なかった。 「千紗、天然そうに見えるだろ。 でもな、あぁ見えて、よく俺に相談に来てたんだ。 “美嘉の大切な存在になりたい”ってさ…」 蓮の目から、一筋涙が頬を伝う。 蓮の手が、涙の為か少し震えていた。 そして、ブレザーの上着の胸ポケットから、白い便箋の手紙を取り出した。 「千紗は…美嘉に向けて、この手紙を読もうとしていた。 3日後は…美嘉の誕生日だったよな?」 私は黙って頷く。 蓮はその手紙を、私に差し出した。 「本当は…誕生日に読んであげたかったらしいけど、叶わなかった。 手紙は、千紗の死体の鞄の中ににあったんだ。 どうか…届けることの出来なかった千紗の思いを、受け止めてほしい」 蓮は真剣な瞳で私を見つめた。 「……」 私は黙って手紙を受け取り、緊張に包まれた雰囲気の中、封を切った。
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