孤独

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「弘行って…千紗のお父さんなんだよね」 私は言いながら首を傾げる。 「そう。訳あって、一緒には暮らせないの」 「…どうして?」 「千紗ができた時、あの人は結婚していた。奥さんは、妊娠していた」 お母さんのその言葉に、私は困惑した。 …初耳だった。 ……不倫……。 「でもね、いつか千紗にも会わせてあげる。とってもとっても素敵な人よ」 そう言って、お母さんは微笑んだ。 悲しげな、綺麗な笑みだった。 …弘行。 それは、自分の大切な人の…――― お母さんが受付を済ます為にどこかへ行ってしまったので、 私は裏庭でのんびり歩いていた。 ―すると。 「見て。あの子、超美人」 「本当。モデルかな?」 新入生らしき、胸元に花をつけた女子二人組が、こそこそ話しながらある人を指差した。 聞こえてしまった私は、気になって彼女らの指の先を目で追った。 …そこには。
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