孤独

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桜と同じ桃色をした細い唇。 雪のように白い肌。 艶やかな栗色の髪。 整った顔。 今この場にいた誰もが、彼女に見とれた。 私が辺りを見渡すと、疎らだが彼女に見とれている人は数多かった。 だが、彼女は鈴のような可愛らしい声で、 「何」 棘を含んだ冷たい声で私達を睨み付けた。 周りの人はそそくさと、歩み去る。 人形のような顔の彼女は、 心までもが人形だった。 だがそれは、彼女のことを何も知らない人の言葉。 私は見た。 氷のような眼差しの中に隠された、 悲しげな瞳。 悲しい過去。 悲しい心。 彼女に一体、何があったのだろう。 彼女はまるで、薔薇だった。 それだけの美貌を持ち合わせているのに、 誰にも触れさせることはない。 彼女は正に、薔薇だった。 彼女なら、私の気持ちを理解してくれるような気がした。
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