孤独

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彼女が私に歩み寄る。 彼女は、私が手を伸ばせば届きそうな距離まで近づいた。 思わず、戸惑った。 薔薇のような彼女は、 棘を含んだ眼差しで、私を睨んでいたから。 …何故だろう。 私は全く怖くなかった。 …そうか。 彼女の全てが、 作られたものだったから。 表情も、感情も、全て。 勿論、この鋭い目も。 私はただ、 彼女と、交わってみたかった。 彼女の見る世界を、共有してみたかった。 彼女…相沢美嘉に関わったのは そんな好奇心。 彼女の笑顔が、 見てみたかった。 4月。 二人は同じクラスだった。 女子トイレの一件から、二人は共に行動するようになっていた。 「美嘉、彼氏出来たんだぁ。 しかも、サッカー部の悠太先輩かぁ」 教室の机に姿勢良く座り、文庫本に目を落とす美嘉に、 私は微笑みかけた。 美嘉はそれでも文庫本から目を離さない。 そっと一言、 「…だから何」 とだけ呟いた。
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