孤独

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…知っているよ。 これは、美嘉の本心じゃないってこと。 「おめでとう」 私がそう呟くと、美嘉が私の顔を凝視した。 私が満面の笑みを浮かべると、 美嘉は照れたように勢いよく文庫本に視線を戻した。 …知っているよ。 美嘉、悠太先輩のこと、好きなんだよね。 分かるよ。 私も、同じクラスの蓮くんが好き。 私と、同じなんだね。 美嘉は部活の時はいつも、悠太先輩を見てる。 二人が恋仲になって、本当に良かった。 本当に…――― 蓮くんは、美嘉を見てた。 数学の授業中、美嘉は蓮くんに話しかけた。 蓮くんは、顔を赤くしていた。 私はきっと、 応援すべきなんだろうな。 私は、ヒロインになれなくても構わないから。 神様。 どうか、美嘉を幸せにしてあげて下さい。 お願いします。 蓮くんに告白したのは、諦めをつける為。 悲劇のヒロインでもいい。 幸せな彼女でなくてもいい。 『千紗ちゃんってさ、馬鹿だよね。話しにくい』 『分かる。空気読めてない』 女子トイレで聞いてしまった、クラスの女子の陰口。 人間不信になりかけていた。 そんな時、 唯一私に素で接してくれた人。 それが美嘉。 例え美嘉が私を友達と認めていなくても、 私は友達だと思っている。 私は、美嘉の幸せを祈るだけ。 本当に、幸せになる権利を持つのは、あの子だけ。 ―――…なのに。 どうして神様は、 いつもいつも 私を優先するの?
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