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私には結衣を咎める力など、なかった。
いや、咎める権利など、なかった。
千紗を殺したのは私だから。
「じゃあね、誑かし女…あら、ごめんなさい。相沢美嘉だったわね」
結衣は一言残し、嘲笑うと、屋上を去った。
私は放心状態で、屋上の手すりに寄りかかる。
「あはっははは…」
そして、顔をひきつらせながら、狂気じみた声で笑った。
「母親違いの姉妹?聞いてない…。千紗は何も言わなかった」
溢れそうな涙。ここで泣けられたら、どれだけいいだろう。
「殺したのは私…泣く権利なんてない」
胸が今にも張り裂けそうで。壊れそうで。
本当は泣きたくて。
死にたくて。
私は屋上の手すりから、下を見下ろした。
そして、手すりを乗り越えて、ふちに立つ。
在るのは罪悪感。
これがせめてもの償いになるならばって、思った。
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