強姦

7/10
前へ
/110ページ
次へ
私には結衣を咎める力など、なかった。 いや、咎める権利など、なかった。 千紗を殺したのは私だから。 「じゃあね、誑かし女…あら、ごめんなさい。相沢美嘉だったわね」 結衣は一言残し、嘲笑うと、屋上を去った。 私は放心状態で、屋上の手すりに寄りかかる。 「あはっははは…」 そして、顔をひきつらせながら、狂気じみた声で笑った。 「母親違いの姉妹?聞いてない…。千紗は何も言わなかった」 溢れそうな涙。ここで泣けられたら、どれだけいいだろう。 「殺したのは私…泣く権利なんてない」 胸が今にも張り裂けそうで。壊れそうで。 本当は泣きたくて。 死にたくて。 私は屋上の手すりから、下を見下ろした。 そして、手すりを乗り越えて、ふちに立つ。 在るのは罪悪感。 これがせめてもの償いになるならばって、思った。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加