恋文

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いつものようにポストを開ける。 中には、ダイレクトメールに混じって勿忘草が咲く封筒がひとつ。 相変わらずきれいな文字で俺の名前が書いてある。 裏返せば、これまでなかった差出人の住所と名前。 見るだけで、疲れなんて吹き飛んで、笑顔になってしまう愛しい名前。 たった3つの文字の羅列が、こんなにも俺の気持ちを浮き立たせる。 玄関に荷物を置き去りにして、手紙の封を開けながら部屋へと急ぐ。 ベッドに腰を下ろして、中の便箋に目を走らせれば、口元が綻んでいくのが分かる。 誰が見ているわけでもないのに、なんとなく恥ずかしくなって唇を引き結び、勢いよく立ち上がると、机の中を漁る。 無造作にしまわれていた便箋を取り出してペンを取った。 これを書き終えたら、ベランダに出て 秋月に電話をしよう。 星を見上げながら、以前のようにくだらない話で笑いながら夜を過ごしたい。 そんなことを考えていたら、自然と手は動く。 少しずつ、想いを紡いでいく。 これが君に送る、最初のラブレター。 完
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