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「やっぱり」
視界の端に映った、ふっと笑って瞼を伏せる秋月の横顔は切なさを帯びていて、もどかしさが募った。
「……捨ててくれていいよ、手紙。どこかで先生と繋がっていたいっていう、私の一方的かつ自己満足な手紙だから」
「……そ」
小さな衝撃。
平静を装って短く頷けば、秋月はじっとこちらを見つめた。
揺らぎのないまっすぐな眼差しは、俺の視線を絡め取って、その場から動けなくなった。
「ごめんね」
「なんで謝る?」
その謝罪の意味が出来ないまま、ただ切なくて。
笑うことでそれを誤魔化して、尋ね返した。
「未練がましくて……諦められなくて、ごめんなさい。迷惑だって、ちゃんとわかってる。だけど先生。私、やっぱり先生が好きです」
どくんと心臓が高鳴ると同時に、2人の間を風が 吹き抜けて、秋月の長い髪をさらっていく。
目を伏せ、なびく髪のを耳にかける仕草がやけに大人びて見えて、俺の方が目を離せなくなった。
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