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「離れたら……薄れたり、消えたりするのかなって思ってたけど、変わらなかったよ」
ゆっくり、秋月は視線を落として、静かに笑った。
「やっぱり、好きだった。あのベランダが恋しくて仕方なかった」
叶うなら、その体を引き寄せて抱き締めたい。
その衝動を必死で抑え、拳を強く握り締めた。
「だけど……先生の顔はどんどんぼやけていくの。それが悲しくて、つらい。先生を好きでいるの、つらいんだ。だから私、今日はこの気持ちをここへ置いていこうって、決めてきたの。もう一度ばっさりふられて、ちゃんと諦める」
秋月はどこか晴れ晴れとした表情で笑うから、目眩がした。
お前はただの生徒だ、って?
お前のことなんか好きじゃない、って?
言えっていうのか、俺に。
こんなにも触れたくて仕方ないのに。
「置いてくなよ、そんなもん」
気付けば、そんな言葉をぶつけていた。
秋月は驚いた顔で俺を見る。
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