告白

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「1人くらい俺のこと好きだって奴がいないと、俺がモテない男みたいでかっこつかねぇだろ?今まで藤倉先生、藤倉先生ってまとわりついてきてた生徒も、ちょっと若くて、背も高くて、男前な新任が来たら手のひら返したみたいにころっと態度変えるんだからな」 なんとも女々しくて苦しい言い訳。 これじゃ、くだらないことにこだわってる、ただの寂しい男じゃないか。 「それは先生が愛想悪いからでしょ」 自分で自分を情けなく思っていると、秋月は呆れたようにくすくすと笑った。 そんな俺に対して、秋月は馬鹿にするわけでも、幻滅した様子もなく、至っていつも通りの普通の反応を返すから、妙にくすぐったくて。 でも、悪くない気分だった。 「教師が生徒に愛想振り撒いてどうする」 そして調子づいた俺は、つっけんどんな物言いをしてしまった。 ふふっ、とほとんど息遣いみたいな秋月の笑いが風に乗って、沈黙を彩る。 2人して見上げた先にある、澄み渡った空の青みたいに、心地よく。 「だから……」 空に向けて視線を投げたまま呟くと、視界の端で、秋月はゆっくりとこちらを向いた。
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