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「自然に俺がお前の中から消えるまで……他の誰かを好きになるまで、持ってろよ」
勝手なことを偉そうに。
自分でもそう思うのだから、秋月だってきっと同じだろう。
だけど……
『あいつ、だいぶ俺に傾いてるよ』
よみがえるのは、ずっと心に引っ掛かったままの山瀬嵐士の言葉。
きっと、そうなんだろう。
あいつの方が、俺よりずっと秋月の傍に居て、何かあればすぐ手を差し伸べてやれるんだから。
ごく自然なことだと思う。
だから、せめて今、この瞬間だけは。
校門をくぐり出ていくまでは。
俺を思っていて欲しい。
「……無茶苦茶だよ、先生」
俯いた秋月はポツリと憤りにも似た言葉を落とした。
そうだよな。
「はい、分かりました」なんていく筈がない。
冗談だと、笑い飛ばす準備をしようと深く息を吸うと、
「私、今日……一大決心してここに来たんだよ?」
秋月はうっすらと目尻に浮かぶ涙を堪えるように微笑み、問い掛けた。
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