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「それでまた……手紙、送り付けちゃうかも」
まっすぐな瞳に俺の反応をうかがうような不安の色が覗くと、少し遅れて、俺の中に安堵が押し寄せてきた。
断たれるかと思っていたものが繋がった安堵。
「どーぞ。お前の数学の成績も気になるところだし?次は成績表同封しろよ」
緩む口元をいたずらなものに変えて言えば、秋月はくすりと微笑を揺らした。
「読まないのに?」
何か言いたげに含みを持たせて尋ねた秋月は、本当は俺が手紙を読んでいることに気付いていたのかもしれない。
「気が向いたらまとめて読んでやるよ。ついでに添削して送り返してやるから、ちゃんと差出人の住所も書いとけ」
もうこれ以上、送る宛もないのに返事を書くのはごめんだと、そんな思いを込めて返せば、秋月は少し困ったように笑った。
「秋月……」
一体、何を言おうとしたのか。
衝動的にその名を呼んで、手を伸ばした時。
俺の行動を制するように、秋月の携帯が鳴り響いた。
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