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「もしもし」
あの日とはまた別の着信音が鳴って、俺を現実へと引き戻した。
あれからどれくらい経ったのか。
暑いくらいの日射しを受けながら、思い出をなぞることに夢中で。
テーブルにあったサンドイッチはいつの間にか綺麗に平らげてあって、手付かずのアイスコーヒーは汗をかいて、中の氷はほとんど溶けてしまっていた。
「先生。茜、検査終わって病室戻ってきたって」
電話を終えるとすぐ、山瀬はそう言って席を立った。
伝票を取ろうとする手を遮って、それを奪う。
「ちょっ……」
「お前に出させるほど落ちぶれてねぇよ。それに……こんなんじゃ足りないくらい、お前には感謝してる」
そう言うと、山瀬は面白くないというような顔で口をつぐんだ。
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