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「元気だよ。ただの貧血だもん」
「……は?」
苦笑混じりの答えに思わず耳を疑う。
すると秋月はきまり悪そうに体を縮めて続けた。
「だから……寝不足とか体調不良とか……いろんなことが重なっての貧血」
「じゃあ、検査は?」
「倒れた時に頭打ったらしくて……念のためのCT」
張りつめていたものが緩むと、堰を切ったように体中からどっと力が抜けていくのが分かる。
腿に肘をつき、顔を手で覆って項垂れると、盛大な溜め息が漏れた。
「やられた……」
山瀬の奴に謀られたのだと悟る。
どうりで、やけに落ち着いてる筈だ。
だけど怒りはなく、笑いが込み上げてくる。
感謝と、安堵と、少し情けないのとで。
「先生?」
指の隙間から秋月の反応を窺えば、不思議そうに首を傾げている。
「倒れたって言うから、てっきり……」
「それで、心配してここまで来てくれたの?そんな深刻そうな顔て?あ……、だからさっき、あんなこと……」
秋月は驚いて目を丸くしたと思うと、すぐに嬉しそうに目を細めて笑いを堪えた。
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