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―――今思えば婆ちゃんはわかってたのかもしれない。
僕――豊条 剣(ほうじょう けん)がまだ幼かった頃、よく婆ちゃんに聞かされた物語がある。
詳しくは覚えていないが、主人公の名前が僕と同じだったのをよく覚えている。
その頃の僕は無邪気に自分もそうなりたいと思っていたが、歳を重ねるごとにその思いは消え、逆に誰よりも平凡を求める様になっていた。
と、いきなり変な回想を入れたのは、
「ハァ~…来てしまったんだなぁ」
僕の目の前には、特区と呼ばれる非日常の代名詞がある。
何故そんな所に居るかと言うと、
――今日からここで過ごす事になったからである。
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