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「かむろちゃーん!! きたよ!」
目の前にあるガラスが震えるほどの大声を搾り出す。
彼女の名前はかむろ。見た目は十歳前後で前髪をまっすぐ横に切り、後ろ髪は肩よりも長い。
いつも着ている服は着物。和服である。市松人形のような、といえばわかり易い。
「どうぞ」
しばらくして小さなこえだが、建物全体で返事をしているように聞こえる。
これにはいつまでたってもなれない。
ドアというよりも戸に手を掛けて右に、溝に沿ってゆっくりと引く。
木がすれる音がよく聞こえる。
開いた目の前には白く薄い前開きの肌着を着たかむろちゃんが正座をしていた。
「おかえりなさい。お兄ちゃん」
深々とお辞儀をして、にっこりと笑う。可愛い!
じゃなくて!
お兄ちゃんって呼んだような気がしたけど!?
「どうしたの? お兄ちゃん?」
間違いない。
いつもなら俺の名前で呼ぶのに……暑さでおかしくなったのかのしれないな。
いや、暑さでおかしくなったのは俺のほうなのかもしれない。
何せ肌着は薄くてうっすらとピンク色の二つが見えている。
一度しっかりと目を閉じて、深呼吸。
今までのかむろちゃんを思い出す。
よく赤い着物を好んでいたっけ。柄が入った着物はあまりきていなかったよな。
髪は黒くてまっすぐで、しっとりとしているけど持つと軽くて。
よし! 目を開けてる。
そこには首をかしげて覗きこむ形で体を少し前のめりにしているかむろちゃん。
やっぱり薄い白い肌着で正座をしていた。
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