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彼の名前は安宅春樹(あたかはるき)。
彼と父親しか男のいない6人家族の末っ子で、長男である。
この日、彼は久しぶりに陸上部の練習に参加していた。
開始時間の朝8時から終了時間の夕方の4時まできちんと参加し、終了後は制服に着替えて処置。
同級生や後輩に『帰る』と声をかけ、彼は部室から出て家に向かっていた。
「……寒っ」
彼は並木道を歩きながら思わずそう呟いた。
それ程、異様に寒かったのだ。
この日、体力を落としたくないが為に、3月下旬にも関わらず春樹は部活に参加していた。
暦上はとっくに春。
そのはずなのだがまるで真冬のような気温で、空も鉛色でどんよりとしていて何処か寒々しい。
昨夜降った雨が寒さで凍っているのを見て彼の背筋が寒くなった、その時。
春樹の目の前を小学生位の少年が通りすぎていった。
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