1⃣ 二律背反

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勿論今日も教室一番乗り。クリーム色の床に、今日最初の一歩を踏み入れた。 教科書類をM校指定バッグから出して、机の中へ移動。とは言っても、ほとんどのものはロッカーの中にあるので、宿題用のノートだけ。 時計の針はほぼ一直線――7時5分。 椅子を机から離し気味にして腰掛け、バッグを机の上で枕代わりに抱いて、机を覆うような形で寝そべるだらしない姿勢。これをやると、全身の力が抜ける感じだ。まだ眠気の残る朝はまた格別だ。 外から聞こえる朝錬組の叫び声が心地よくて、次第にまどろんでいった。 完全に閉店状態の目蓋(まぶた)。 あと少しで眠りに落ちようかという時、野太い運動部の男共の声とは一線を隔す重低音が、僕の耳に微かに入ってきた。
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