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5階に着くまでは、確かに大きく聞こえていたのに。僕はふと踵(きびす)を返して、音楽室を背にして廊下を歩き始めた。
あっちにあるのは確か、茶道室、ゼミ室――そして、部活の活動拠点でもある科学室。
僕はわざと足音を大きくたてて進んでいった。演奏者に僕の存在を知らせる為に。
音が止んだのは、見慣れたドアの前にきた時だった。《科学部 地味に暗躍中!!》
と書かれたポスターが貼ってある。部長の書いたものだ。
ドアを軽くノックした。「どうぞ」
聞きなれない女の人の声だった。可愛い声だと思った。声の質からして教師ではないだろう。
放課後に開けなられているドアなのに、この時ばかりは流石に緊張した。
いつもよりドアが重く感じた。
《パンドラの箱》という言葉が、不意に浮かんで消えた。
中にいたのは《パンドラの箱》に値する人物だった。
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