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ピンポーン チャイムの音に俺は回想から現実へと意識を戻された。 ――おいおい、チャイムが鳴るのとか何ヶ月ぶりだ? 「出なくていいのか?」 久しぶりに鳴ったチャイムに感慨を抱いていると、赤が俺に向かって言った。 「ああ、そういえばチャイムって俺を呼び出すためのものだったな」 「うわぁ……」 引かれた。 「冗談だ」 ――半分だけどな。 「だといいが」 「まあいいや。押し入れにでも隠れてろ。敵かもしれない」 「めんどくさ」 言いながらも、赤は押し入れに隠れてくれた。 「うわ広っ。部屋があるならもう少し物をストックすればいいのに」 「余計なお世話だ」 俺は赤を置いて玄関のドアの穴から外を見た。 小汚ないオッサンが居た。 「誰ですか」 「はあい。みんなのアイドル、サイケちゃんだよっ!!」 ――さあ、どうやって殺そうか。 「あ、今君すっごい物騒なこと考えたでしょ!?」 「物騒なのはお前の存在だ」 野太い声で可愛子ぶるオッサンは始めて見た。 ――これほどキモいとは。 「あっでもこの人を殺しても無駄なんだからねっ!! 私の能力は他人の精神を乗っ取ること!! 則ちこの人はただのホームレスさんなのですっ!!」 「なるほどそうか。最近は自分の能力をペラペラ喋るヤツが多くて助かるな。でも死ね」 「えーっ!! ちょっと話だけでも聞いてよおっ!! 損はさせないからさあ!!」 「……話だけだ。不審な動きをしたら、即殺す」 もちろんハッタリだが。 「ありがとう!! 愛してる!! ペロペロしちゃいたいぐらい!!」 「おいやめろ」 命を狙われる以上の怖気が走った。 「あっそういえば私今こんなだった。ごめんね。知っててやったけど」 「これ以上ふざけても殺すからな」 「手厳しいっ、手厳しいなあ、伊種くんは」 急に、外見に相応しい渋い雰囲気になった。 底が読めない。 「いいからさっさと用件を言え」 「ええ、そうですね。伊種くんに殺されちゃあ困りますもの。こうして私が現れたのは、あなたがそれなりの数の能力者を殺したからですよ」 「……忠告でもしに来たのか?」 「いえいえ、違います……」 少し溜めてから、サイケは嬉しそうにこう言った。 「私は奨励しに来たんですよ。能力者の殺し合いをね」
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