6720人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
「魔法は存在している。……時間だ、決まったか」
「……行く!」
恥ずかしい話、小さい頃から病のせいで寝たきりの生活が続いていたので、あまり外の世界を知らない。
旅とかしてみたい。
恋だってしてみたい。
あーゆーことも試してみたい。
でもきっと元の世界ではそれは叶わないだろう。
私死んだんだろうし。
あーあ、死んだときを覚えてないってもったいないなあ。
……これから何回も死ねばいいか。よし。
「不老不死で丈夫な体、それからなくならないくらいの魔力!」
「良いだろう」
欲しいものを告げると、男はさらさらと書類に文字を書き込んだ。
ふー、と目頭をつまみ、大きな判子に手を伸ばす。
「では《ワカ》。君は永遠を楽しむといい」
「うん。で結局アンタ誰……」
最後の質問には答えないまま、男は判子を書類に押した。
瞬間視界が歪み、私はまた意識を手放したのだった。
.
最初のコメントを投稿しよう!