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月明かりで芝生が光って見えた。
ピカピカと、まるで宝石が一個一個、力いっぱいに輝いているようだった。
「すげー、おい甲斐菜!芝生が光ってるぜ?」
「馬鹿だよね~?これは昨日の雨で芝生に水滴が付いてそれに反射してんのよ?」
「お前なんでそんなことが分かるんだ?」
「見れば分かるわよ?」
「はっ!まさかお前」
「ドーピングじゃ無いわよ!なんなのそれ!?気に入ったのそれ!?」
田舎でも都会でも無い町。そんな所で俺達は育った。
甲斐菜とは同じ小学校で、同じクラス。
俺が虐めれているといつも助けてくれる。甲斐菜はまさに、テレビアニメでみたヒーローのようだった。
でも、俺はいつか甲斐菜を越すんだ。身長も強さも…そしていつか、甲斐菜を守れる男になるんだ。
「なあ甲斐菜、俺がお前のこと守る。だから、だからずっと俺と一緒にいてくれ」
芝生に付いた水滴が、ズボンに染み込んで来るのが分かった。
俺達は月を見上げながら、キラキラ輝く芝生に座り込んでいた。
そっと甲斐菜を見ると、甲斐菜は嬉しそうに笑った。
「あんたが私を守ってくれるんだ~?あはははは、馬鹿ねあんた?なら私を倒しなさいよ。」
「笑うなー!なんで笑うんだ!……俺は、俺は本気なのに…甲斐菜とずっと一緒にいたいのに!」
甲斐菜は笑うのを止め、涙を流す俺の頭に手を置いた。
「積、ありがとう。私もずっと積と一緒にいたいよ?」
「本当に?」
涙声で、やっと出た掠れた声…その声をも包み込むように、甲斐菜は俺を抱き寄せた。
「本当だよ…本当だよ?積…」
大きな月に見下ろされながら、2人は一日中抱き合っていた。
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