412人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
流石、名の知れた男だ。
僕とほぼ互角ってことか……。
沖田総司以来、久々に面白くさせてくれそうじゃない?
鍔迫り合いの中、目の前の男、本山を見据えて、口角を上げた。
しかし、この状況の中、近くに居た彼の仲間が大声でこう叫んだ。
「本山殿……っ!!一番隊が……っ!!」
「八郎……っ!?くそ……っ。貴様の相手をしているわけにはいかなくなった!!退け!!」
「行かせな……い」
「動くな……っ!!本山殿!!ここは私が……っ!!」
おそらく、三枚橋の方で一番隊とやらが危機に陥っているのだろう。
本山は、顔色を変えると渾身の力で僕の刀を弾き、急いで向かおうとするのを止めようとしたが、その場に居た仲間が銃を構えた。
踏み出した足を戻して、刀を下段に構える。
本山は、『任せる』とだけ言うと三枚橋へと向かい、残った兵と僕は、相手の出方を待つようにして睨み合った。
ほんの数歩の距離での睨み合い。
刀の届かない中距離では、相手が持つ銃が有利だ。
いや、この状況だと一瞬で間を詰めれば、斬り捨てることができる。
幸い、雨脚も強くなってきたところだ。
一発の銃弾を弾けば良いだけ……。
ぬかるんだ地面を踏みしめて、刀の柄を握り直した。
見える……っ!!!!
相手は、顔を強張らせて、銃の引き金を引いた。
バンッと重い音が響いた直後、僕は、キンッと銃弾を弾き飛ばし……。
「ひっ……」
怯えた眼差しをしていたけれど、僕はそれを無視し、頭から叩き斬った。
「はぁ……」
噴き出す鮮血が服にへばり付くのも気にせず、僕は息を吐いて、刀に付着した血を振り払う。
そして、周りの戦闘には目もくれず、三枚橋の方へと歩みを進めた。
最初のコメントを投稿しよう!