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一面深紅で包まれていた。
どこを見ても赤、赤、赤。
それは絶対にあり得ないことだ。
世界で1番大きな都市イェルサレムが燃え上がっていたのだから。
そこはもう地獄だ。
建物は崩れ燃え上がり、路上には数えきれないほどの人間の骸が転がっている。
中には生きている人間もいるが、彼らにとって今生きていることが一番の不幸であろう。
一酸化炭素中毒で倒れればどれほど幸いだったことか。
たまたま生き残ったとある男性のヘクターは、ごく普通の一般企業の会社員であった。
結婚をしており一児の父である彼は、都市郊外で住んでいる家族のため日々仕事に勤めている。
今日も郊外で暮らす家族のため、少しでも多くのお金を得るため夜勤をしていた。
それは二時間前までの夢物語。
突如大きな揺れが彼を襲った。
蛍光灯が割れ、本棚が崩れ、壁に亀裂が入る。
彼は一目散に机の下に潜り込み避難した。
揺れは10秒ほど続き、やがておさまる。
嵐は去った後、だが彼は嵐の前の静けさとしか受けとめられない、苦にもそれは的中する。
窓の向こうの世界。
そこはタナトスが支配する世界。
建物は炎上、中には崩れたものも、そして果てた多くの骸。
すべての原因は目の前にあった。
硬く厳重に舗装されていたアスファルトが粉々になっていた。
目の前には大きな大樹がアスファルトを突き抜けそびえ立つ。
いや、これは大樹であって大樹にあらず。
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