人間水槽

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ユウキが水面に飛び出して鬼の形相で足元の怪物を睨みつける。 「このっ……クソ野郎!」 これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。俺とケンスケは素早くユウキの足元に潜った。 巨大な何かがいた。 ユウキの足を捕らえて水底へ引きずり込もうとしている。 俺は必死に怪物の灰色の身体を殴り、噛みついた。 もう誰も死なせるわけにはいかない。 暴れる怪物。俺はものすごい力で吹っ飛ばされて水面に浮上した。 俺が水面に顔を出すと同時に、ユウキも水面を割って飛び出した。ユウキが息を荒らげながら言う。 「怪物が急に捕まえていた俺の足を離しやがった……あれ、ケンスケがいないぞ!」 俺たちは周りを確認するが、どこにもケンスケはいない。だとしたら水中にいるはずだが、一向に上がってくる気配はない。浮き上がってくるのは大きな水泡のみ。怪物の持つ二つの目も見当たらない。 俺とユウキはケンスケの行方を察した。 「ケンスケ!」 俺たちは天井に向かって吠えた。
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