257人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
開かれたと同時に誰かが席を立って出口に歩き出す。
カップルだ。
正直、人前でいちゃつくカップルは嫌いだが、今回ばかりは乗っていてほしかった。
彼らが降りたらぼくはこの異様な世界にひとりで閉じ込められることになる。
人はそこにいるのに動かない、喋らないこの空間。
気味が悪いのだ。
カップルと一緒に降りたかったが、ぼくの降りるべき駅はこれから二つ先の駅だ。降りるわけにはいかない。
誰か乗ってくることを期待したが、そんな気配はなく、あっさりと扉は閉められた。
最初のコメントを投稿しよう!