人間水槽

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「タクヤ……俺が浮かんでこなかったら、後は頼んだ。怪物に襲われようとも、息がもたなくとも、俺は絶対にボタンを押してくるつもりだ」 そういうユウキの表情は、普段のユウキからは想像できないほど穏やかだった。 しかし、その目の奥は、強く、強く光を発していた。 「何言ってんだよ。二人で生きて帰るんだろ。そしてカズキとケンスケの分までしっかり生きるんだ」 涙が止まらない。流れた涙は水に落ちてその一部となる。 俺は決心を固めて言った。 「俺も行く」 ユウキは納得したというように頷いた。 水位はすでに十九メートルを突破していて、上を仰げばすぐ目の前に天井がある。あんなに遠く感じた天井も、こんなに近くまできてしまった。 俺とユウキは大きく息を吸い込むと、同時に水中に飛び込んだ。
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