人間水槽

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水面に顔を出した俺は驚いた。 すぐ目の前に天井があったのだ。 水面と天井との距離はもう十センチないかもしれない。 酸素が足りない。呼吸が苦しい。 気づけば俺は金魚のように口をパクパクしながら、残りわずかとなった空気をとり込んでいた。 正直、もう潜水する体力は残っていなかった。身体が激しく酸素を求めていた。耳は痛み、胸は苦しい。 もうすぐこの部屋は水で満たされる。絶望的だった。 カズキとケンスケの顔が浮かんでは消える。二人は笑って手招きをしていた。 脳に酸素が十分に行き届かなくなってきたようだ。 意識が朦朧としてくる。 このまま俺は死ぬのか……。それも悪くない。二人のもとに行けるならそれでも……。 カチリ。 音がした。と同時に急激に水位が下がり始める。 ……どういうことだ。この部屋は水でいっぱいになるんじゃなかったのか。なぜ水面が下がる?……そうだ。
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