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ユウキがボタンを押したのだ。
失われかけた意識がはっきりしてくる。
ユウキは?ユウキは無事なのか?
汗と血と涙を含んだ水はどんどんかさを減らしていく。
俺は波打つ水にもまれながらも、ずっとユウキのことを考えていた。
やがて俺の足は何か硬いものにぶつかった。
それは最初に見た白い床だった。破裂したはずの床はなぜか元通りになっている。
俺たちをさんざん苦しめた水は、白い床や壁に吸い込まれるようにしてあっさりと消えた。
ボタンの光は消えていた。それを見た俺は、ユウキがボタンを押したのだと確信する。
ユウキーー。
俺はすばやく周りを確認する。
ユウキはどこにもいなかった。怪物もいなかった。部屋は最初に見たときと同じように白く殺風景で、まるで、何事もなかったかのようにそこにあった。
ただ、びしょぬれで呆然としている男がひとりーー。
俺はユウキに思いを馳せる。
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