花瓶

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あれはぼくが小学六年生のときでした。 ぼくは五年生の終わりごろからクラスのある四人組と話が合うようになり、一緒に行動したり、遊んだりする仲になりました。 その四人組は昔から仲が良かったようで、ぼくがその仲良しグループに加入するような形でした。 けれども、ぼくはそのグループにすぐにとけ込んで、仲良し四人組は仲良し五人組へと変わっていきました。 ある日の理科の授業の終了後、ぼくたち五人はいつものように理科室を出て教室に戻ろうとしていました。 しかし、ぼくらの足の動きは、五人の中の一人のカズヤの一言によって止められました。 「おい、何か見慣れないものがあるぞ」 カズヤが目を細めて理科室の後ろーー黒板と反対側の壁を凝視しているので、それにつられてぼくたち四人の視線もそこに誘導されました。 まず、ぼくの目に一番最初に入ってきたのは花瓶に挿された赤い薔薇。 それ以外はこれといって目立つものがないので、カズヤの言っているものはこれのことだと直感しました。 ぼくたちは駆け足で花瓶のもとに向かっていきます。
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