花瓶

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授業終了を知らせる合図の鐘の音とともにぼくたちは終わりの挨拶を済ませると、ぞろぞろと花瓶の下に集まりました。 「血とかがだめな人は下がって下がってー」 「お前そういうの無理だろ」 「平気平気。前まではだめだったけどもう克服したの」 そんな会話が飛び交う中、誰かが呟きました。 「ところで誰があの花瓶取ってくるの?」 「オレがいく!オレが」 元気よく手を挙げたのはカズヤでした。カズヤはクラスの中でも一段と活発で、リーダー的存在で、彼に運動神経の良さで敵う者はいないということは誰もが知っていたので、それに口出しする人はいませんでした。 カズヤは棚の取っ手を上手に足場にしながら難なく登っていきます。その背中に女子たちが熱い視線を送っているのをぼくは知っていたので、ぼくは少し嫉妬の入った眼差しをカズヤに向けていました。 カズヤは花瓶に手が届くところまで辿り着くと、足場を安定させて花瓶を持とうとしました。
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