花瓶

9/14
前へ
/192ページ
次へ
次の日、カズヤは松葉杖をついて学校に現れました。 みんなが唖然としてカズヤを見つめる中、彼は「昨日すっ転んで脚折っちゃった」と頭に手を置いておどけてみせました。 でも誰も笑いませんでした。 昨日花瓶を割ってしまったのはカズヤだということをみんな知っているのです。 花瓶を割ったカズヤがその日の放課後に骨折した。 果たしてこれが本当に偶然なのだろうか。 みんなそう思っていたに違いありません。 授業を受けるために理科室に行ったぼくたちは驚きました。 棚の上に飾られた薔薇と青い花瓶を見て。 よく見ると花瓶には亀裂が入っていて、修繕した跡が確認できます。 「昨日まとめてゴミ箱に捨てたはずなのに……」 隣にいたクラスメイトが青ざめた顔でいいました。 それ以来、その花瓶に近づこうとする人はいなくなりました。 しかしそれでも、花が枯れることはなく、常に新鮮な状態を保ち続けていました。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加