乗客

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空が暗くなってきていることがわかる。目だけを動かして親に借りた腕時計を見ると、六時二十五分だった。 次の駅で電車を降りてバスに三十分ほど乗っていくのだが、バスを降りるころには辺りは真っ暗になっているだろう。降りたバス停から祖父母の家までは徒歩十分で着くらしい。地図を持っているとはいえ、暗い田舎道を歩くのは少し心配だった。やはり、今日は行くべきではなかったかもしれない。 そんなことを考えていると、電車の速度がゆっくりと落ちていくのを感じた。 もうすぐ次の駅に着くーーこの不気味な集団から解放されるらしい。 そう考えると、彼らに対して抱いていた恐怖心は一気に消し飛んだ。 不気味ではあるけれど、彼らは人間だ。バケモノなんかではない。よく考えるとぼくが本を読もうと声を出そうと、彼らがぼくに危害を加える動機がない。何を今まで怯えていたんだ。 あと数十秒でこの異常な空間から距離をおくことができるという考えは、ぼくの心に余裕を与えた。
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