花瓶

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それ以来、ぼくはその三人を嫌疑の目で見ずにはいられなくなりました。 人を疑うことは良くないことだとわかっていましたが、こればかりは仕方のないことかもしれません。 クラスでおもしろいことが起きてみんな笑っています。 その三人も笑っています。 けれども、この中にいるのです。 本性を黒い仮面で隠した奴がーー。 そいつが花瓶を棚に置いて花を飾っているということは容易に推測できます。 大切な花瓶を割ったカズヤを恨んで、カズヤの脚を折ったのです。 ならなぜそこまであの花瓶を大切にしているのか。それを割ったカズヤに復讐するほど、割れたそれを修繕するほど大事にしているのはどうしてか。そんなことは本人にしかわかりません。 そういえば、疑問に思ったことがもうひとつあります。 子どもであるそいつがあの大きな花瓶をどうやって高い棚の上に運んだのか。両手がふさがった状態で果たして棚の取っ手を使って登っていけるのかーー。 それを考えると、先生たちもグルだったんじゃないかと思えてきます。 ユウイチ、ケン、ショウゴーー。 この中の誰かが、みんなが花瓶の破片を片づけているときに、ひとりカズヤを睨みつけていたのかもしれません。 脚を押さえてうずくまっているカズヤを見て、表は心配そうな顔をしていても、心の底では嘲笑っていたのかもしれません。 人間って怖いなと思った小学六年生のときの出来事でした。
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