尾行

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バスを見送った俺は家へと続く路を歩いていた。 目の前に広がる通学路は俺が部活を終えて帰るころにはすっかり暗くなってしまっている。 周りを塀で囲まれた路地は人通りが少なくひっそりとしていて、十メートル間隔で灯が点滅している。 灯が点いているといっても、辺りが闇に包まれてしまうといかにも「出そう」な雰囲気を醸し出していた。 何度も通っている俺でも、この路を通るときは軽くお化け屋敷の中を歩いているような気分になるのだ。 俺はポケットに手を突っ込みながら歩みを進める。 習慣化して癖となっているその仕草を俺は気にしない。 そんなことよりも俺を取り囲む暗闇の方が気になるのだ。 今日は月が雲に隠されているので、灯のない路は自分の足が見えないほど暗い。 白く光る二つ目が闇に浮かんでいた。 「ひっ……」 俺は情けない声を上げて後ずさる。
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