尾行

3/7
前へ
/192ページ
次へ
二つ目はそんな俺以上に驚いたのか、目をぱちくりさせてから素早く塀の裏へと姿を消した。鳴き声とともに。 「何だ猫かよ……」 俺は息を吐いた。ホッとした安堵の気持ちと自分が情けないという自己嫌悪の気持ちで。 子供みたいに夜道にビクビクしている自分が嫌になる。もちろん、何も出やしないなんてことはわかっている。でも、どうしてもだめなのだ。夜の闇が曲がり角からじっと俺を見ている気がしてならなかった。 コツ、コツ、コツ……。 俺は素早く後ろを振り返った。 だが、そこには通ってきた路地に灯が弱い光を落としているだけだった。 不気味ではあるが、いつもの夜道と変わらない。 気のせいだろうか。誰かが歩く音が聞こえた気がしたのだが。 俺は歩みを再開する。 コツ、コツ、コツ……。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加