尾行

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翌日、学校で友人がニヤニヤしながら俺の席にやってきた。その友人は俺と家が近く、昔から仲が良かった。 「昨日俺の家の近くで誰かがすごい声出しながら走っていったんだけど、その話知ってるか?」 俺は友人から目を逸らして答える。 「何だその話、初めて聞いたよ」 友人は俺の肩を叩いて笑った。 「その誰かさんってお前だろ。言い逃れはできねえぞ。俺、お前がもの凄い形相で走っているの見たんだから。ただごとじゃなかったみたいだけど何かあったのか?」 友人は依然としてニヤニヤ顔を浮かべている。 俺は急に恥ずかしくなった。俺の昨日の無様な姿が友人に見られていたのだ。いや、友人だけではない。あれだけの大声を出したのだから、もしかしたら今ごろ近所では噂になっているのかもしれない。親の耳に入ったら最悪である。 でも、昨日は落ち着いていられるような場合ではなかった。話せば友人もわかってくれるだろう。
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