沼の王者

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そして年月を重ねるごとに、弱者だった俺は少しずつ、確実に食物連鎖のピラミッドを登っていった。 食べる立場、食べられる立場が逆転する。 かつて俺を捕食しようと襲っていた動物たちは俺を見て一目散に逃げ出すようになる。 やがて口には鋭い牙が生え始め、足の爪が発達し、全身硬い皮膚に覆われるようになる。成長速度は凄まじく、十年もすると猪の三倍もの大きさにまでなった。 そして邪魔だった沼で一番大きなニシキヘビを殺したときには、もうこの沼で俺に逆らう者はいなくなっていた。 俺はこの沼の頂点に君臨するようになったのだ。 王となった俺は本能の赴くままに行動した。 腹が減れば水を飲みにくる鹿や猪を襲い、生意気なジャガーやワニを八つ裂きにし、眠くなればその場で眠りについた。 どんな生物でも、俺を見ると血相を変えてその場から消え去った。 他の動物たちが俺を恐れ、崇めていることがたまらなく快感だった。
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