沼の王者

6/6
前へ
/192ページ
次へ
王様への礼儀を知らないこいつらに、俺自らが制裁を下してやろう。 俺がやつらに向かって飛びかかろうとした瞬間、腹に鋭い痛みが走った。 群れの中の一匹が何かを俺に向けて投げつけたのだ。その何かが槍という武器であることを俺は知らない。 俺は激昂した。身の程知らずの猿ごときが、この俺様に! 今度は背中に激痛が走る。 後ろにも敵はいたのだ。 前後左右至るところから槍が飛び交う。何本もの槍が硬い鎧を貫いて肉に食い込む。 俺は踊り狂いながら叫び声を上げた。 何百匹もの二足歩行の猿が俺を取り囲んでいることに気がつく。 その様子はまぎれもなく、俺が今まで行っていた“狩り”そのものであった。 ただ今までと違うのは、俺は“狩る側”はなく、“狩られる側”であるということだ。 やがて、ハリネズミのように身体から無数の木の棒を生やした巨体はゆっくりと崩れ落ちた。 自分が王であるという自信とプライドとともに。 俺が王の座を二足歩行の猿に譲った瞬間だった。 自分が最強だとうぬぼれていた俺は愚かだった。 薄れゆく意識の中、俺は思った。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加