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それは台所と思われる部屋を歩いているときだった。
「この部屋、何かすごく散らかってるよな。泥棒でも入ったみたいに……」
見れば、棚やテーブルはひっくり返されていて、割れた皿やティーカップなどが散乱している。人が通るために道が作られているが、それ以前は足の踏み場もないほどひどい有り様だったんだろうと推測できる。
仲間のひとりが呟くようにぼくに尋ねた。
「そういえば、この建物のどこの部屋で死体が見つかったんだっけ?」
誰かが「こんなときにやめろよ」といっているのが聞こえる。
ゾワゾワと鳥肌が立ち、背筋を冷たいものが駆け抜ける。
死体が見つかった部屋。
ズタズタに引き裂かれた死体が見つかった部屋。
そこはーー。
「……この部屋だ」
「きゃあああああああああ!」
ぼくがそう呟いた直後、金切り声が廃墟内に響き渡った。
パニックに陥る中、仲間の女の子が震える手である一点を指していた。ーーここ、ここ。
続いてそれを見たぼくら男性陣も小さな悲鳴を上げる。
部屋の一角にどす黒く浮かび上がる血痕を見て。
まさにこの場所に、死体が転がっていたんだ。
そう認識した瞬間、恐怖がこみ上げてきて、ぼくたちは悲鳴を上げながら近くにあった扉に突進した。
激しくぶつかったために扉を突き破ってしまったが、それにかまわず外へと飛び出す。太陽のあまりの眩しさに目を閉じながら叢へと転がり込んだ。
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