生命のビデオ

3/11
前へ
/192ページ
次へ
これが別腹というものだろうか。そのステーキを見た瞬間、ぼくの胃袋に入っているはずのカップラーメンは引っ込み、ぎゅるると音を鳴らせた。 ぼくたちはすぐにステーキをたいらげてしまった。 トモキの家は裕福であり、三時のおやつにも今回のように他の家では絶対に出ないような高級かつ美味なものが出される。ぼくたちはそれを知っていたので、みんなで遊ぶときはトモキの家に集まることが多かった。 膨れた腹を満足そうにおさえながらケイゴがいった。 「ところで今日は何して遊ぶ?」 「ゲームやろうぜゲーム。ほら、あの最新作の。トモキ買ったんだよな」 「いや、その前にまずはこれをみんなで見ないか?」 トモキはシュンの提案を軽く受け流して一本のビデオを掲げてみせた。 その四角形の箱には“生命(いのち)のビデオ”と大きく書かれている。 ぼくはそのビデオをトモキから受け取ると、奇妙な注意書があることに気がついた。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加