乗客

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翌朝、ぼくは早朝バスに乗って祖父母の家へ向かった。祖父母は母からの電話でぼくは昨日着くと聞いていたようで、心配していたんだぞと怒った。それでもすぐに怒りを引っ込めて、煎餅や和菓子を出してぼくをもてなした。どうして遅れたのか問い詰められたけれど、ぼくは適当な理由を作って誤魔化した。バスに乗りたくなかった、なんて言ったら意味がわからんと怒られるだろう。 ぼくは祖父母の家で二泊してから、迎えにきた両親の車で帰宅した。 ふと、あの集団は一体何だったのだろう、どこに向かっていたんだろうと思う。 あとになってわかったことだが、その日、その時間帯に運行するバスは存在してなかったらしい。 あの時もし彼らについていってしまったら、と思うと今でもゾッとする。
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