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ある日の朝、ぼくは両親の目を盗んでおばあちゃんの部屋へ近づいた。
どうしてもおばあちゃんの様子をこの目で確かめずにはいられなかったのだ。
忍び足で部屋に向かい、ドアノブに手を伸ばすと、後ろから怒声が聞こえた。
お父さんは張り手をくらって泣いているぼくの前にしゃがみこむ。
「だめじゃないか……。この部屋に入ってはいけないと、あれほど言っただろう。おばあちゃんのことが心配なのはわかるが、これも隆史のためなんだ」
お父さんはゆっくりとした口調でそう言ったが、その話し方はどこか威圧的でもあった。
ぼくを見据えるその目がなんとなく怖くなり、ぼくは逃げるようにしてその場を離れた。
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