冷雨の夜に

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缶ビール片手に部屋に戻った俺は扉に手をかけた。でも、なぜが開かない。 そうかオートロックか。めんどくせぇな。 中の妻に声をかける。 「おーい、俺だ。開けてくれ」 何の反応も返ってこない。 「おい、開けてくれ。早いとこビールが飲みたいんだ」 依然として開く気配がない。 あの野郎……! 「おい、アキコいい加減にしろ!開けろっつってんだろ。ぶち殺すぞ!」 汚い言葉を吐き散らし、我を忘れて扉を何度も何度も激しく叩く。 俺はハッとした。若い男が迷惑そうにこちらを見ている。 ちくしょう、ロビーの店員に開けてもらうよう頼むか。まったくどうなってんだ。 ここで俺は待てよ、と思う。 本当に中に妻はいるのか? ここまで声を張り上げて扉を激しく叩いたんだから気づかないはずがない。それにまた無視をして開けなかったら俺に殴られるかもしれないことなど、妻もわかっているはずだ。何かを買いに部屋を出たのか、俺に嫌気がさして逃げ出したか、それともーー。 ホテルの外から雨の音に混じって大勢の人が騒ぐ声が聞こえ始め、やがてサイレンの音が近づいてきた。
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