飢える山

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よく晴れた秋の日、私は家の裏の山にキノコ狩りに出かけた。 私はキノコ狩りや野草を摘むのが好きで、忙しい中わざわざ時間を作ってよく野山に出かけていた。 今日は今年に入って最初のキノコ狩りということで、心を躍らせながら森に足を踏み入れた。 しかし、異変を感じたのは山に入ってすぐのことだった。 探しても探してもどこにもキノコが見つからないのだ。昨年は大量に生えていた倒木のある場所に行ってみても、どういうわけかひとつも生えていない。 よく考えるとキノコを探している途中、団栗や山葡萄などもまったく見かけていないのに気がついた。 また、かつてキノコ狩りに行くときは、美しく色づいた紅葉を眺めながらキノコを探すのを楽しんでいたものだが、今年の紅葉は茶色や紫色をしたものが多く、どこか薄気味悪かった。 帰ろう。 そう思ってまわれ右をして来た道を戻ろうとした。ところがすぐに、あれ、と思い立ち止まる。
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